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観光産業全体としてみた場合は、観光を構成する運送業者・宿泊業者・旅行業者等が、大局的な観光の展望もないまま、それぞれのビジネスに重なり合う狭い範囲内での提携に終始し、相互の協調関係の構築や、本格的な連携にまでお互いに踏み込まなかった。観光業界での地位は、ハードを持つ航空会社・鉄道会杜・バス会社等の運送業者やホテル・旅館等の宿泊業者が上位にあり、ハードを持たずソフトだけで競争する旅行業者は下位に位置づけられる「序列」が存在した。また、待遇面でもかなり大きな差があった。
旅行業界は、高度経済成長に基づく海外旅行ブームに支えられ成長してきたが、当時の実態は、零細である事業の拡大をめざして大小の事業者が入り乱れて、激しく顧客の獲得競争に奔走するばかりで、そこには観光に対するしっかりとしたコンセプトやマネジメントは不在であった。また、経営的にも余裕のない状態が現実であった。旅行業界内の競争に明け暮れ、仕事を得るため、業績を上げるために、顧客の言いなりになり、そして顧客の我がままを増長させてきたことも否定できない。会社には計画的な教育の習慣はなく、実務的なOJTによる教育だけに終始してきたし、組織展開もできなかった。労働集約的で連日続く長時間労働と低水準の待遇に甘んじながらも、スタートしたばかりの旅行業界を、自分たちの手で支えるのだと意気に感じる「若者の夢やエネルギー」が、旅行業界の活力を保ち成長を可能にしてきたといえる。

 

旅行業の状況

小規模旅行業者が大多数を占める旅行業界
海外旅行の自由化当初、航空代理店・旅行代理店と呼ばれていた時代から、現在は、取扱実績の拡大に伴って「旅行業」として社会的に認知され、株式を上場する企業も3社(東急観光、近畿日本ツーリスト、HIS)出現している。旅行業は運送業や宿泊業の代理行為を行う割合が大きく、業績は売上高で表示せず「取扱高」として公表されるが、旅行業の取扱高に占める企業関連の取り扱い=企業関係の団体旅行や業務出張等は、バブル崩壊後の企業のリストラの一環で旅行需要が低迷している。しかし、旅行に対する個人観光客の関心は高く、特に円高に対する反映で、海外旅行については国民の根強い需要に支えられて伸長が著しい。一方、国内旅行はその割高感からやや停滞感があり、訪日外国人も円高による需要の減少傾向がみられるものの、平成2年から平成6年の旅行業者の取扱高は、湾岸戦争、バブルの崩壊、低価格競争等の厳しい向かい風の状況の中であっても、[表2]の通り、全体的には安定して推移している状況にある。

 

表2 一般旅行業者の取り扱い実績(単位:億円)

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(運輸省運輸政策局観光部)

 

一方、平成3年から平成7年の旅行業者の数は[表3]のとおりであるが、旅行業者の

 

 

 

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